保育士が知っておくべき食育とは?保育園での給食のねらいや食育の取組みについて

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保育士が知っておくべき食育とは?
保育園などの保育施設では、すでに食育の重要性が一般的に広がり、地域食材を使った給食や様々な土地柄の料理の勉強など、食育を通じて子供たちが生活基礎を作り出す食事について学ぶことが増えてきました。保育園でもこうした食育に関する活動を園だよりや給食だよりなどを通じて保護者に報告する必要があり、保育士の中には、スキルアップアップのために食育に関する資格を取得している方もいます。そこで本記事では保育士が知っておくべき食育とそのねらいについて、ご紹介します。

食育の基本について

食育とは、子どもたちが健やかに成長し、健康的な食生活を送るために必要な知識や態度を身につけるための教育です。食育の基本には以下の3つの柱があります。

1.安心、安全、健康な食べ物を選ぶ「選食力」

栄養バランスの取れた食事をするために、五大栄養素の重要性や食材への理解を身につけます。五大栄養素は、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルからできており、これらの栄養素が身体のどの部分にどのような影響を与えるかを理解することで健康的な食生活の基盤を築くことができます。食材への理解は、野菜、果物、肉、魚、穀物など、さまざまな食材の栄養価とその役割について学びます。たとえば、野菜や果物がビタミンやミネラルを豊富に含み、免疫力を高める効果があることを教えます。そうして自分の身体にとって何が必要か、何が安全か、何を摂れば健康になれるかを考える力が身に付きます。

2.食事の作法や感謝の気持ちを学ぶ「共食力」

食育_子供の作法
まず基本的な食事の作法やマナーについてです。正しいお箸の使い方や食事中のマナー、例えば口を閉じて食べることや食べ物を噛みしめることなどを教えることで、子供たちは食事の場での基本的なエチケットが身に付きます。食事の場での礼儀や他者への配慮も学び、他人との食事をより楽しいものにする基本的な姿勢を養います。
また世界の多様な食文化と日本の食文化への理解も重要です。世界各地の食文化や伝統料理に触れ、食習慣の多様性を理解します。これにより、子どもたちは異なる文化や習慣を尊重する心を育てることができます。また日本の和食の基本や伝統的な食材(米、味噌、醤油など)の役割や歴史についても教えます。例えば、親からの子に味噌がどのように作られ、どのように健康に役立つかを教えることで、親子間でのコミュニケーションが増えます。こうして家族や友達との会話を楽しみながら食事をする楽しさを知ることに繋がります。

3.視野を大きく持つ「地球の食を考える」

食べ物の食べ残し(フードロス)や地球の環境問題について考えていきます。日本では多くの食料を輸入に頼っていますが、同時に輸入した食料が大量に廃棄されています。まだ食べられる食べ物を食べ残したり、賞味期限が切れたり、カビが生えたりして破棄してしまうことが増えています。一方で世界では、多くの人が食料不足で苦しみ、飢えや栄養失調による病気で亡くなっています。こうした問題について考えることが重要です。

保育園での食育について

保育士は、子供たちの健康と成長を支える重要な役割を担っています。その中でも、保育園ので食育は、子供たちに健康的な生活習慣を身につけさせ、食に対する興味と感謝の心を育むために非常に重要です。
また保育園を管轄している厚生労働省も同じように、食育の観点から、保育の目標として具体的な子供たちの姿を掲げています。

➀ お腹がすくリズムのもてる子ども
➁ 食べたいもの、好きなものが増える子ども
➂ 一緒に食べたい人がいる子ども
➃ 食事づくり、準備にかかわる子ども
➄ 食べものを話題にする子ども

このように楽しく食べる子どもに成長していくことを期待し、行政も保育園での食育活動を重要視していきます。

保育園での食育活動について

保育園での食育は、日常の保育活動の中で自然に行われることが理想的です。具体的な取り組みをご紹介します。

給食の時間で食材紹介

給食の食材や調理過程の紹介をします。給食のメニューに含まれる食材を紹介し、その栄養価や健康への効果について話します。調理過程についても簡単に説明し、食材がどのように調理されるかを教えます。

料理体験

食育_子供の料理
簡単な調理過程や季節の料理を紹介します。包丁などの子供たちがケガをする恐れがあるものを使用せず、ラップでおにぎりを作ってみるなど簡単な調理過程を紹介し、食材がどのように調理されるかを教えます。
他にも季節ごとの食材を使った料理を一緒に作り、旬な食材についても学びます。「秋にはきのこを使ってお味噌汁を作ろう」などといった体験をすることで、自然のリズムや食との関連性を理解することができます。

食育イベントの開催

農場や市場への見学も子供たちにとっては楽しいイベントです。地元の農場を訪れ、野菜や果実の栽培過程を学ぶとともに、実際に野菜の収穫をする体験ができると子供たちの興味を引きやすくなります。
市場を訪れて、新鮮な食材がどのように運ばれて売られているかを学びます。市場の方から、新鮮な食材の選び方や食材の保存方法などを教えてもらうことで交流も生まれます。

絵本や紙芝居の実施

食育に関する絵本や食材の歴史や栄養についての紙芝居をすることも、子供たちと一緒に楽しく食育を学べます。食に関する物語やおにぎりなどの身近にある料理テーマを扱うことで、子供たちも興味を持ちやすくなります。

保護者にも参加してもらう

保護者向けの園だよりや給食だよりなどのニュースレターや保育園のウェブサイトを通じて、食育に関する情報や家庭での実践方法を提供します。例えば、お家で簡単にできる食育活動や子供たちが好きな健康的なレシピの紹介をします。親子で食育活動を行うことで、子供たちも保育園で得られた学びとは違った楽しさも得ることができるはずです。また保護者向けの食育ワークショップを保育園で開催し、子供たちtろ一緒に参加できる調理体験や栄養勉強会を行います。これにより家庭でも食育が実践されやすくなります。

食材の栽培

食育での食材の栽培
保育園で育てやすい野菜の栽培も人気な食育です。保育園の庭やプランターを使って、子供たちと一緒に野菜やハーブを育てます。例えば、ミニトマトやハツカダイコンなど育てやすく収穫もしやすい野菜だと、収穫後に給食やおやつにも取り入れやすいです。子供たちが自分で育てた食材を食べる喜びを経験できます。

食べ物の由来と歴史の学習

例えば、パンの作り方を通じて小麦が粉になり、生地をねり、生地をねかせ、形を整え焼き上げるなど食材の生産と加工を一連の流れで実際に体験し知ることができます。また日本のおせち料理のように、「おせち料理」の意味や各料理が象徴するものを教えることで、伝統料理について学び、その由来や歴史も理解できます。

食べ物を通じた異文化理解

様々な国の料理や食材に触れることで、異文化理解を促進します。また多文化共生をテーマにしたイベントを開催し、日本とは異なる文化の食べ物や食習慣を子供たちに体験させることで、世界への興味も大きくなるでしょう。

食材のリサイクルと環境教育

食材のリサイクル
食べ残しをリサイクルする取り組みを行います。食べ残しを使って堆肥や堆肥をつくる容器(コンポスト)を作り、その堆肥を使って野菜を育てます。また食材の無駄遣いを減らすための教育を行い、環境に配慮した食生活を推進します。例えば、「食べ物を大切にしよう」というテーマで、ゴミを減らす方法や食材を無駄にしない工夫について子供たちと話し合います。

保育園での給食のねらいとメリットについて

保育園での給食には、子どもたちの健康と成長を支援するための重要な目的があります。以下に、給食のねらいと具体的な取り組みをご紹介します。

子供たちの健康的な食生活の基盤を作る

管理栄養士が子供たちの成長のために、栄養バランスを考慮し計画された給食メニューを提供し、子供たちが健康的な生活をおくる上で必要な栄養素を適切に摂取できるようにしています。例えば、主食、主菜、副菜、汁物、デザートといった構成で、子供たちの成長期に必要なエネルギーや栄養バランスを考えた食材の適切な量と種類で給食を提供しています。また季節の野菜や果物、地元の食材を積極的に取り入れ、地産地消を目指しフードロスを減らすことにも注力しています。

子供たちの健康な体づくり

健康な体作り
成長期の子供たちに必要な栄養素をバランスよく摂取させることで、健康な体づくりをサポートします。例えば、カルシウムを豊富に含む乳製品や魚介類を積極的に取り入れます。栄養バランスの取れた給食は、子供たちの体力と免疫力の向上に寄与します。これにより、病気にかかりにくい体を作ります。

規則正しい食習慣の形成

毎日決まった時間に給食を子供たちに提供し、規則正しい食事のリズムを身につけることを目指します。これにより消化器官の働きも整えられ、健康な生活を送ることに役立ちます。また新しい食材や多様な食材を給食に取り入れることで、子供たちに新しい味や食感を体験してもらい、好き嫌いや偏食を減らします。

社会性の育成

保育園での給食では友達と一緒に食事をすることで、社会的なマナーが育まれます。食事中の会話や食べ物を大切にすることなどの食事マナーはもちろん、配膳や片付けを手伝うことの役割分担なども含まれます。

食に対する興味と知識の向上

保育園の給食を通じて、季節の食材や地元の特産物について学ぶ機会を提供します。例えば、調理師が「今日の給食は地元の農家さんからいただいた新鮮なナスを使っています」と紹介することで子供たちは、給食に使われている食材にも興味を持ちます。また「このお味噌汁はたくさんの野菜が入っていてビタミンが豊富だから風邪の予防にもなるよ」と保育士が子供たちに話すと、食材に対する知識が深まります。

食べ物への感謝の心を育む

家族で食べ物への感謝
食材がどのようにして子供たちの手元に届くか、その大変さを教え、食べ物への感謝の気持ちを育てます。食事の前後にする「いただきます」や「ごちそうさま」のあいさつの意味を話し習慣づけ、食べ物や料理を作ってくれた人への感謝を持つように指導します。例えば、保育士が子供たちに農家や漁師、料理を作る人たちへの苦労と感謝を話すことで、子供たちもその食材や食事自体への感謝を忘れず、食べ物を無駄にしない姿勢が身に付きます。

保育士も取得する食育の資格について

保育士も食育に関する資格を取得することで、保育や教育の現場でより効果的な食育活動を実践するための専門知識とスキルを身につけることができます。具体的な食育に関連する資格を紹介します。

食育スペシャリスト

一般社団法人日本野菜ソムリエ協会が主催し、食育に関する深い知識を持ち、実践力を養うことを目的としている資格です。特に野菜や果物の魅力や重要性を伝え、健康的な食生活を推進する役割を担っており、食の基本知識、食文化、栄養学、食育の実践方法、コミュニケーションスキルなどのカリキュラムを通信教育、オンライン講座、ワークショップなどで学びます。学習終了後に試験があり、合格すると資格が取得できます。

食育アドバイザー

一般財団法人日本能力開発推進協会(JADP)が主催し、食に関する基本的な知識から実践までを学び、健康的な食生活を推進するためのアドバイスを行う専門家を育成しています。カリキュラムも栄養学、食品の安全性、食育の基本、食文化、食事の計画と実践、コミュニケーションスキルなど様々あり、通信講座やオンライン講座で学び、学習終了後に試験があり、合格すると資格が取得できます。

幼児食インストラクター

一般社団法人日本インストラクター技術協会(JIA)が主催し、幼児期の子どもたちに適した食事や栄養についての知識を持ち、実践的な指導を行う専門家となる資格です。幼児の健全な発育をサポートするための食事提供方法を学びます。カリキュラムは幼児食の基礎知識から、幼児期の発育・発達と食事の関わり、子供の成長に合わせた献立の工夫、栄養素の基礎知識、病気・食物アレルギーの対処法などを通信講座やオンライン講座で学びます。こちらも学習終了後に試験があり、得点率70%以上で合格すると資格が取得できます。

アレルギー対応食アドバイザー

一般財団法人日本アレルギー協会が主催し、食物アレルギーに関する知識を持ち、安全な食事提供を行うための専門家となる資格です。アレルギーの理解と対応法を学び、アレルギーを持つ子どもたちに安全な食環境を提供することを目的としています。カリキュラムも食物アレルギーの基礎知識、アレルゲンの特定と除去法、安全な食材選びと調理法、緊急時の対応方法などを通信講座やオンライン講座で学び、学習終了後に試験があり、得点率70%以上で合格すると資格が取得できます。

食生活アドバイザー

一般社団法人日本食生活協会が主催し、食生活へのアドバイザーとして健康的な食生活を提案し、実践をサポートする専門家の資格です。日常生活の中での食育活動を推進し、食生活を総合的に見直す幅広い見識を持つことができます。カリキュラムも栄養学、食品の選び方、調理法、食生活の改善方法、健康管理など幅広く、通信講座やオンライン講座で学びます。学習終了後に試験があり、合格すると資格が取得できます。

こども成育インストラクター<食専科>

一般社団法人日本こども成育協会が主催している資格で、子供の成長と発達に応じた栄養と食事についての知識を提供し、保育や教育の現場で役立てることを目指すことを目的としています。子どもの成育と栄養、年齢別の食事プランニング、食物アレルギー対応、食育活動の実践方法などのカリキュラムがあり、通信講座でオンライン講座で学びます。こちらも学習終了後に試験があり、合格すると資格が取得できます。

保育士も資格を取った後が重要

これらの食育に関する資格は、それぞれ異なる側面から食育にアプローチし、子供たちの健やかな成長と発達をサポートするためのものです。保育士も食育に関する資格を取得することで、保育や教育の現場でより効果的な食育活動を実践するための専門知識とスキルを身につけることができます。各資格の取得方法や試験内容については、発行法人の公式ウェブサイトで詳細を確認し、自分の目的に合った資格を選んで取得を目指してみましょう。そして取得できたら、保育園などの保育施設でぜひ食育について子供たちに教えてあげてください。そうすることで子供たちの健康と成長を支えることに繋がってきます。

最後に

保育園での食育と給食は、子供たちの健康的な成長と発達を支えるために重要な役割を果たしています。栄養の知識、食文化への理解、食事のマナーを教えることで、子供たちが健康で豊かな食生活を送れるようにサポートしましょう。保育士も日常の保育活動に食育を取り入れ、子供たちの未来をより良いものにするために、積極的に取り組んでいきましょう。また、保護者や地域と連携し、家庭や地域全体で食育を推進することで、より効果的な食育が実現できます。保育士として、食育の重要性を理解し、子供たちが健やかに成長するための基盤を築く努力を続けていきましょう。

 

参考:厚生労働省「楽しく食べる子どもに~保育所における食育に関する指針~」

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キララサポート編集部

キララサポート編集部

保育士・看護師専門の転職支援サービス「キララサポート」がお役立ち情報を発信中!運営会社である株式会社モード・プランニング・ジャパンは全国で保育施設「雲母保育園」を展開しており、医療と保育現場、そして転職活動のプロフェッショナルとして情報を提供しています。