保育士の処遇改善等加算Ⅰ・処遇改善等加算Ⅱとは?内容を徹底解説!
公開日: 更新日: 保育士の福利厚生・待遇慢性的な保育士不足の問題は、今もなお解消されていません。厚生労働省の参考資料「保育士の現状と主な取組」(令和2年8月24日付)によると、保育士の離職率は、平成29年時点で9.3%です。
また、「過去に保育士として就業した者が退職した理由」では、最も多い「職場の人間関係」に次いで、「給料が安い」ことが挙げられています。このような現状を改善するため、国が進めているのが保育士の処遇改善施策です。
その処遇改善施策には、「処遇改善等加算Ⅰ」と「処遇改善等加算Ⅱ」の2つの制度がありますが、具体的な内容や違いを知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、保育士の「処遇改善等加算Ⅰ」および「処遇改善等加算Ⅱ」の内容を徹底解説します。制度の内容に興味がある方や、自分または自分の勤務先が処遇改善等加算を受けられるのか知りたい方は、ぜひ確認してみてください。
目次
保育士の処遇改善等加算Ⅰとは
保育士の「処遇改善等加算Ⅰ」とは、賃金の安定的なベースアップを目的とし、当該施設・事業所に勤務する職員の一人あたりの平均経験年数によって、加算率が変わる制度です。
対象となるのは、職種に関係なくすべての常勤職員で、常勤職員以外でも、一日6時間以上かつ月20日以上勤務していれば対象に含まれます。処遇改善等加算Ⅰの加算率を決める要素は、「基礎分」「賃金改善要件分」「キャリアパス要件分」の3つです。
それぞれの要素の内容については、以下の表を参考にしてください。
<処遇改善等加算Ⅰの加算要素と内容>
加算要素 | 内容 |
---|---|
基礎分 | 職員一人あたりの平均経験年数に応じて、賃金に2~12%上乗せされます。 |
賃金改善要件分 | 加算する年度の前年度を基準とした「賃金改善計画書」および「実績報告書」を提出することで、賃金に上乗せされます。 加算率は、職員一人あたりの平均経験年数が11年未満の施設・事業所は4%(※)、11年以上の施設・事業所は5%(※)です。 |
キャリアパス要件分 | 施設・事業所が次の要件を満たす取り組みをしている場合、または「処遇改善等加算Ⅱ」の適用を受けている場合に、賃金に上乗せされます。 ・役職や業務内容に見合う勤務条件および賃金体系を定めている ・キャリアやスキル向上のための具体的な計画を定め、計画に沿った研修の機会を確保し、すべての職員に周知している 加算率は、2%です。 |
(※)キャリアパス要件分を含めない場合。
なお「職員一人あたりの平均経験年数」は、過去に勤務した施設・事業所での経験年数も含めて考えます。対象となる職員の経験年数をすべて合算し、それを対象となる職員の数で割って出た値が「職員一人あたりの平均経験年数」です。
保育士の処遇改善等加算Ⅱとは
保育士の「処遇改善等加算Ⅱ」とは、一定の実務経験がある若手・中堅保育士のキャリアを支援するため、新たな役職を増設し、その役職に就いた職員の賃金に加算する制度です。役職が増えることで、若手や中堅層でもキャリアアップがしやすく、賃金も上がりやすくなる環境作りが期待されています。
増設された役職は、「副主任保育士」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」の3つです。それぞれの役職に就くための要件については、以下の表を参考にしてください。
<処遇改善等加算Ⅱの役職と要件>
役職 | 要件 |
---|---|
副主任保育士 | ・経験年数がおよそ7年以上であること ・職務分野別リーダー(以下参照)を経験していること ・マネジメント研修および3分野以上の専門研修を受けていること ・研修修了後に副主任保育士としての発令を受けていること |
専門リーダー | ・経験年数がおよそ7年以上であること ・職務分野別リーダー(以下参照)を経験していること ・4分野以上の専門研修を受けていること ・研修修了後に専門リーダーとしての発令を受けていること |
職務分野別リーダー | ・経験年数がおよそ3年以上であること ・担当する職務分野の研修を受けていること ・「乳児保育リーダー」など、終了した研修分野の職務分野別リーダーとしての発令を受けていること |
処遇改善の金額は、副主任保育士と専門リーダーが月額4万円、職務分野別リーダーが月額5,000円です。また、上記要件からもわかるとおり、それぞれの役職に就くためには指定の研修を受けなければなりません。
それらの研修を総称して「キャリアアップ研修」といい、都道府県(市区町村)や大学、専門学校、非営利団体などが主体となって実施しています。キャリアアップ研修を受講したら、都道府県(市区町村)などの各実施期間から発行される修了証を受け取りましょう。
保育士の処遇改善等加算Ⅰと処遇改善等加算Ⅱを項目別に比較
保育士の処遇改善等加算Ⅰと処遇改善等加算Ⅱの違いを、あらためて項目別に比較してみましょう。
目的の違い
処遇改善等加算Ⅰと処遇改善等加算Ⅱは、「保育士の賃金を改善する」という目的では同じです。ただし、処遇改善等加算Ⅰでは、「賃金改善計画書」および「実績報告書」の提出を通じて各施設の現状を把握し、そのうえで賃金のベースアップを図る目的があります。
一方の処遇改善等加算Ⅱでは、保育士がキャリアアップしやすい組織体制を構築することによって、賃金の改善につなげるのが狙いです。
対象者の違い
処遇改善等加算Ⅰの対象者は、職種に関係なくすべての常勤職員です。また、常勤職員以外でも、一日6時間以上かつ月20日以上勤務していれば対象となります。
一方、処遇改善等加算Ⅱの対象者は、保育士の経験年数がおよそ3年以上、または7年以上の若手・中堅保育士です。
給与の上がり方と配分方法の違い
処遇改善等加算Ⅰでは、「保育士の処遇改善等加算Ⅰとは」の章で解説した要素をもとに、施設ごとの加算率が算出されます。その加算率に基づく手当をどのように配分するかは、施設に委ねられているため、具体的に「誰の賃金にいくら上乗せされるか」を明確に示すことはできません。
一方の処遇改善等加算Ⅱでは、副主任保育士と専門リーダーが月額4万円、職務分野別リーダーが月額5,000円、賃金に上乗せされます。
ただし、月額4万円を上乗せする職員を一人以上確保していれば、月額5,000円~4万円の範囲内で、副主任保育士と専門リーダーへの加算分をほかの職員に配分することも可能です。
保育士の処遇等改善加算にまつわるQ&A
処遇改善等加算に関して、よくある疑問と回答をいくつかご紹介します。
処遇改善等加算を受けられる職場は?
処遇改善等加算手当は国の助成金のため、認可施設のみが対象となります。認可施設で勤務している保育士なら、パートや派遣保育士などの雇用形態でも、処遇改善等加算を受けられる可能性があるでしょう。
処遇改善等加算による手当が給与に反映されていないのはなぜ?
前の章「処遇改善等加算Ⅰと処遇改善等加算Ⅱを項目別に比較(給与の上がり方と配分方法)」でお伝えしたとおり、手当の配分方法は施設によって異なります。
毎月の給与ではなく賞与に上乗せするケースもあるため、手当について疑問がある場合には、勤務先に確認すると良いでしょう。
処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ以外の保育士の処遇改善制度はある?
処遇改善等加算Ⅰ・処遇改善等加算Ⅱは国の処遇改善施策です。それ以外にも、都道府県や市区町村が主体となり、保育士の処遇改善を行っている場合もあります。
制度の有無や内容は自治体ごとに異なるため、各自治体のホームページを確認したり、問い合わせたりしてみましょう。
まとめ
保育士の処遇改善等加算Ⅰおよび処遇改善等加算Ⅱは、賃金の改善などを通じて保育士を確保する目的があります。保育士自身も、これらの制度について理解しておけば、勤務先を選ぶ際の参考になるでしょう。
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