保育士の処遇改善とは?地域独自の手当や支給対象外の人も紹介!
公開日: 保育士の働き方・環境
待機児童問題の解消や保育需要の高まりによる慢性的な保育士不足対策として、国が処遇改善の施策を取り組み始めて11年が経過しました。
保育現場で働く保育士へ支払われる手当などの待遇は、どのように改善されたのでしょうか。
今回は、保育士の処遇改善について詳しくご紹介します。
目次
保育士の処遇改善が始まった背景
保育士の半数以上が、5年未満で退職しているといわれています。
退職の理由の上位にあるのは、「給料の低さ」。保育士の月給は他の職業に比べて低く、「仕事量に対して給料が見合わない」と感じる人が多いようです。
このことは、保育士の退職だけでなく、就職にも影響しているといわれています。
そこで国は保育士不足の解消のため処遇の改善に取り組み、2013年には「保育士処遇改善等加算」制度を、2017年には給料アップと保育士のキャリアアップを盛り込んだ「保育士処遇改善等加算Ⅱ」も作成しました。
【Check】保育士の給料についてはこちらの記事でも紹介しています
「保育士処遇改善等加算」とは?
「保育士処遇改善等加算」では、2017年までの4年間で全ての保育士に7%、月額で21,000円程度の給料アップがされ、「保育士処遇改善等加算Ⅱ」では、全保育士の給料2%、月額6,000円程度が上乗せされました。
この5年間で支給額は約10%、月額32,000円程度アップしたことになります。
「技能・経験を積んだ保育士等の処遇改善」についても「保育士処遇改善等加算Ⅱ」で盛り込まれ、新しく設けられた役職に就けば、月額で最大4万円のアップも目指せるという内容も盛り込まれています。
また、2022年2月から開始された処遇改善加算Ⅲでは、認可保育園などで働く全職員を対象とした施策として、申請のあった施設では毎月9,000円(収入の約3%)の賃金上乗せがされています。
また、保育士の賃金引き上げを目的とした施策や、保育士の待遇向上に向けた取り組みは引き続き進められていく見通しです。
処遇改善加算制度は、保育士の賃金アップだけでなく、保育の質向上にも寄与すると考えられています。
新たな役職と「キャリアアップ研修」とは?
これまでの保育士のキャリアには、園長と主任保育士以外の役職が少なく、キャリアや給料のアップが難しい状況でした。
新制度では「副主任保育士」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」という3つの役職を新設し、キャリアアップがしやすい仕組みが作られました。新たな役職に就くには規定の条件を満たし、保育園から任命される必要があります。
それぞれの条件詳細は、次の通りです。
副主任・専門リーダー
「副主任保育士」「専門リーダー」は、月額40,000円アップとなります。
7年以上の経験年数とキャリアアップ研修4分野終了が条件で、園長と主任保育士を除く約3分の1が対象。職務分野別リーダーの経験が必要です。
職務分野別リーダー
「職務分野別リーダー」は、月額5,000円アップとなります。
3年以上の経験年数と保育実践とマネジメントを除いたキャリアアップ研修のうち1つの分野の終了が条件で、園長、主任保育士を除く約5分の1を上限として対象になっています。
キャリアアップ研修とは
キャリアアップ研修とは、保育士に必要な知識やスキルが学べるもので、8つの研修分野(乳児保育、幼児保育、障碍児保育、食育・アレルギー、保健衛生・安全対策、保護者支援・子育て支援、保育実践、マネジメント)から選択します。
研修終了の効力は全国で有効なので、引っ越し等で転園しても、保育士としてのキャリアを証明するものにもなります。
保育士の処遇改善手当でもらえる金額や支給日は?
保育士の処遇改善手当とは、保育士の賃金改善を目的とした手当で、保育士の待遇向上を図るために支給されるものです。
支給方法や金額、支給日は保育園ごとに異なり、支給額は職務や経験年数によって変わります。
処遇改善手当は、国から保育園に一括で振り込まれた後、保育園側が各職員に支給します。
多くの場合、支給日は毎月の給料日に合わせて支給されますが、保育園によっては賞与と一緒に支給されたり、一時金として別途支給されたりするケースもあります。
支給額については、園の方針や職員の役職・経験に応じて異なるため、具体的な金額は個人の状況や保育園によって決まることが多いです。
保育士の処遇改善手当の期間はいつまで?
処遇改善手当は、保育士の給与を向上させるために導入された制度で、一定の期間にわたって支給されるものです。
特に「月額9,000円アップ」の施策が話題になりましたが、この施策は2022年2月から9月までの期間限定でした。
その後も、処遇改善加算Ⅲとして公定価格の見直しにより、保育士の給与を3%引き上げる措置を継続すると明記しています。
また、処遇改善加算Ⅰ(勤続年数による給与アップ)や処遇改善加算Ⅱ(役職に応じた給与アップ)については、引き続き適用されており、今後も継続的に支給される制度です。
このため、処遇改善手当の支給は基本的に途切れることなく、保育士の処遇改善が図られるようになっています。
処遇改善でもらえる手当の金額は保育園によって違う!?
このように処遇改善が進められていますが、次のような問題も抱えています。
補助金の使用は保育園の方針によって異なる
保育士の処遇改善の手当は、国や自治体からの補助金で賄っています。保育園に一括で支給された補助金を、どのように配分するかは保育園に一任されています。
そのため月々の給料に上乗せするのではなく、ボーナスや一時金として支給したり、残業代として支給したりするところも珍しくありません。
役職手当の一部が他の職員に支給されることも…
副主任保育士や専門リーダーに支給される4万円も、役職に就いた人数の約半数に4万円を支給すれば、残りは他の職員で分配してもよりという決まりがあります。
こうした配布のあり方は、保育園内の給料格差を生まないために配慮されたものなのですが、同じキャリアなのに給料に差がつくなど、保育士の不満につながってしまうようです。
このような不公平感を解消するためにも、さらなる財源の確保が問われています。
東京都や松戸市など、独自の手当がある自治体も
さらに保育士確保に悩む自治体の中には、独自で保育士の処遇改善に乗り出しているところもあります。
東京都の「保育士等キャリアアップ補助金」
その先駆けとなったのが東京都。保育士等キャリアアップ補助金は平成27年に創設された補助金制度で、平成30年度は平均して月額約2万7,000円の賃金の上乗せが実施されました。
参考資料:保育士等キャリアアップ補助金の賃金改善実績報告等に係る集計結果
千葉県松戸市の「松戸手当」
松戸手当とは、松戸市内で働く保育士に保育園から支払われる給料とは別に、勤務年数に応じて月額45,000円~72,000円の手当が松戸市から支給されるものです。
他にも、家賃補助や保育士の子どもの保育料優遇など、松戸市は保育士への手厚い支援で注目を浴びています。
参考資料:松戸市の保育士確保に関する取組み まつどDE子育て|松戸市
保育士の処遇改善手当で支給対象外の人は?
処遇改善手当は保育士の給与を引き上げるための制度ですが、すべての保育士が対象となるわけではありません。
以下の条件に該当する方は、処遇改善手当の対象外となる可能性があります。
ー支給対象外となる主な例ー
・勤め先が「認可保育園」でない場合
認可保育園以外の施設(認可外保育施設や幼稚園など)で働いている場合、たとえ保育士として勤務していても、処遇改善手当は支給されません。
・園が申請を出していない場合
処遇改善手当を受け取るには、園が自治体に申請手続きをしている必要があります。申請を行っていない場合、対象となりません。
また、園によっては、産休や育休中の保育士に対する手当の支給が異なる場合もあり、分配方法は園ごとの裁量によります。
さらに、役職による処遇改善加算Ⅱも、副主任保育士や特定の役職に就いている保育士に加算される手当の一部が他の職員に分配される場合もあります。
園の方針や申請状況によって支給の可否が変わるため、自分の状況に合った確認が必要です。
まとめ
今回は、保育士の待遇改善について詳しくご紹介しました。
保育士の処遇に関しては、手当の支給額にばらつきはあるものの、少しずつですが改善の取り組みが進んでいるようです。現役の保育士だけでなく、再就職を考える潜在保育士や保育士を目指す人にとっても、安心して長く働ける環境が整うことが求められますね。
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