保育園のお散歩は必要かどうか。保育士が知っておくべきお散歩のねらいと注意点

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保育園のお散歩は必要か?お散歩のねらいと注意点園児と先生たちで保育園外の道を歩くお散歩。多くの園で日常的に行っている活動のひとつですが、その安全性や必要性について保護者の方などから質問を受けたり、不安を抱いていたりする保育士さんも多いのではないでしょうか。
今回は、保育園のお散歩についての議論が生まれるきっかけとなった大津市の事故について、保育園側の過失はどうだったのかなどを考えながら、保育園のお散歩の必要性やねらい、お散歩を安全に楽しく行うための注意点などをご紹介します。

保育園のお散歩中に起きた痛ましい事故

2019年5月8日、丁字路の歩道上で信号待ちをしていた保育園児たちの列に、軽自動車が突っ込むという交通事故が発生。2歳児2名が死亡した他、園児と保育士合わせて14名も重軽傷を負いました。
ゴールデンウィーク明けに滋賀県大津市で起きたこの事故のニュースを見て、胸を痛めた方も多いことと思います。
信号待ちをしていた子どもたちが保育園のお散歩中であったことや、保育園が事故当日に記者会見を開いたことなどから、全国的にも大きな波紋が広がりました。

保育園側の過失の有無

保育園の散歩事故の過失この事故でまず注目が集まったのが、「保育園側に過失があったのかどうか」でした。現場の状況や事故原因などから、過失の有無を考えていきます。
事故当時、園児を歩道の奥に並ばせて、保育士が道路側に立ち園児を守るようにして信号待ちをしていたとされています。保育士たちは最善を尽くしていたといえるでしょう。

また、丁字路には信号が設置されていたことから、保育園のお散歩コース選びに大きな問題があったとも思えません。
さらに、事故の直接的な原因は軽自動車が歩道に突っ込んできたことですが、実はこの軽自動車は歩道に乗り上げる直前に、対向車線から右折しようとした乗用車と衝突していました。衝突のはずみで歩道に突っ込んできたと見られています。

このような予測不可能な動きに保育士が対処することは、まず不可能だったといえるでしょう。

事故を報道したテレビ番組で、交通事故の専門家が「保育園側の過失や問題点はない」と答えたことなどからも、保育園側の過失はなかったという見解が世間にも広まっています。

行政も再発防止のために動いている

この事故を重く受け止め、市や県でも再発防止のための対策を実施しています。
事故の発生後、行政が主体となって市内の保育園・幼稚園の散歩コースの点検が行われました。保育士も同行し、道路整備への要望などを提案したといいます。
その後も、市の職員が散歩コースの安全確保のためのプロジェクトを立ち上げるなど、さまざまな取り組みが行われています。

保育園のお散歩は必要なのかどうか

大津市での事故を受けて、インターネット上などを中心に「そもそも保育園のお散歩は必要なのか」といった意見が挙がっています。SNSなどでそういった問題提起の書き込みを見た方も多いのではないでしょうか。
保育園でのお散歩が必要なのかどうかについて、ここで少し考えてみましょう。

園庭のない保育園ではお散歩は絶対に必要

保育園のお散歩は必要かまず、園庭のない保育園にとって、お散歩は必要不可欠な活動であるといえます。
待機児童対策で必要な保育園数が急増していることなどから、都心部での保育園設置が進んでいることは、ご存じの方も多いことでしょう。しかし、地価の高さや用地取得の困難さなどの理由で十分な敷地面積が確保できず、園庭を設けられない保育園が増えています。

園庭がない場合は、近隣の公園などへ出掛けなければ、外遊びをすることができません。子どもにとって、目いっぱい体を動かして遊ぶことができる外遊びは、大きな楽しみの1つであり、健康的な成長や発達に欠かせないものです。
もしも園庭がない保育園でお散歩が禁止されれば、園児は室内でしか遊べなくなってしまいます。

園庭のある保育園でもお散歩は大切な活動

では、園庭がある保育園であればお散歩は必要ないかというと、そうではありません。
園庭があっても、面積が十分でなく、全園児が遊ぶには手狭といった場合もあります。このような保育園では、園児の半分は園庭で遊び、もう半分は近隣の公園で遊ぶといったように調整しています。

十分な広さの園庭を備えている場合でも、お散歩には園庭遊びとは違ったおもしろさや学びが詰まっていることから、定期的にお散歩を実施している場合が多いでしょう。また、毎日同じ園庭で遊んでいると飽きてしまう子どももいるかもしれません。

このような理由から、園庭があるからといってお散歩が不要とはいえないでしょう。

保育園のお散歩はなぜするの?お散歩のねらい

では、保育園のお散歩は何のために行っているのでしょうか。お散歩のねらいについて、改めて考えていきましょう。

四季折々の自然とふれあう

保育園のお散歩のねらいお散歩の楽しみといえば、道中にさまざまな植物や虫などの姿を見つけることができることです。春は桜やたんぽぽ、ちょうちょの姿を眺め、夏はひまわりと背比べをしたりカブトムシを探したり…四季折々の自然にふれることで、感性や情緒が育まれます。

体力をつける

歩くことによって園児の体力をつけるのも、お散歩のねらいのひとつ。「歩く」というのは全身運動なので、無理なく自然に基礎体力をつけることができます。

社会性を身につける

お散歩中、近所の方や通行人の方とすれ違うこともあります。このようなときに挨拶をしたり、道を譲り合ったりといった経験から、社会性が育まれていきます。

交通ルールを身につける

お散歩を通じて、信号機のマークの意味や横断歩道の渡り方などの交通ルールを学ぶことも大切な経験です。
大津市の事故のような回避しようのない事故もありますが、子どもの交通事故の多くは斜め横断や左右の確認不足による飛び出しが原因です。お散歩中に繰り返し交通ルールを教えていくことが、子どもの交通事故被害を減らしていくことにつながります。

保育園のお散歩中に起こりうる危険

さまざまな良い効果があるお散歩ですが、冒頭でご紹介したような事故の他にもさまざまな危険に遭遇する可能性があります。
では、保育園のお散歩中にはどのような危険に遭遇する可能性があるのでしょうか。

交通事故

保育園のお散歩中の交通事故お散歩の危険を語るにあたり、外すことができないのが交通事故です。
不注意や飲酒運転などによる危険運転のほか、高齢者の方のブレーキとアクセルの踏み間違いなどによる誤発進事故も増えています。ほか、子どもの飛び出しによる事故や、自転車との接触事故などの危険性があります。

段差などでの転倒

遊び慣れた園庭や保育園の周辺と比べると、初めて通る道や慣れない公園では、段差などで転ぶ子も増えます。

虫刺され、草木かぶれ

季節によっては、蚊やハチ、毛虫に刺されるといった虫刺されの危険性も。自然の多い場所ではウルシ・イラクサなどに触れてかぶれるなどの草木かぶれも心配です。

不審者との遭遇

お散歩中、奇声を上げていたりフラフラしていたりといった明らかに様子のおかしい人や、園児の後をつけてくる人に遭遇することも考えられます。
奇しくも大津市の事故と同じ2019年5月に発生した、川崎市のバス停でスクールバスを待っていた小学生たちが男性に襲われ多くの死傷者が出た通り魔事件のような例もあります。

お散歩中の安全確保のために保育園側でできること

さまざまな危険が想定される中で、安全にお散歩をするため、保育園としてはどのようなことを行っていけば良いのでしょうか。

保育園のお散歩コースの再確認

散歩コースの再確認多くの保育園では、十分な検討を元にして、散歩コースが決められていることと思います。ですが、道路状況や周辺環境は年々変わっていくものです。コース決定時に安全だった道が、今も最善のコースかどうかは分かりません。また、専門家などの第三者の目から見ると、危険な箇所があるかもしれません。

危険箇所がないかどうか、より良いコースがないかどうかなどを自主的に確認してみる、もしくは確認を園長や主任に提案するなどしてみてはいかがでしょうか。

園児向け交通安全教室の実施

正しい交通ルールを園児に身につけさせるためには、警察署による交通安全教室の実施が効果的です。制服を着た「おまわりさん」が保育園に来て話をしてくれることで、園児たちもいつも以上に真剣に耳を傾けてくれます。
お散歩中に交通ルールを守らない子がいた場合も「おまわりさんがダメって言っていたよね」と言い聞かせることができます。

園児向け野外活動リスクの周知

虫や草木などの危険を伝えるためには、絵本やパネルシアターなどを利用すると良いでしょう。
たとえばハチの危険性を伝えたい場合、ハチの写真やイラストを見せてどんな虫なのかを教え、刺されるとどうなるか、見つけたらどうするべきかなどをお話ししていきます。

職員向け防犯訓練(不審者対応訓練)の実施

不審者の出没に備えるためには、保育士向けの防犯訓練を実施することをおすすめします。
実際のお散歩中に誰かが不審者役を演じて実践訓練を行ってください。地元の警察署に依頼し、協力をお願いすることも可能です。

訓練は抜き打ちで行っても良いですし、お散歩中に尾行してくる不審者がいた場合にどんな行動を取れば良いか、不審者が襲いかかってきた場合はどう対処すれば良いかなどをシミュレーションし、マニュアルにまとめた後で行っても良いでしょう。

お散歩中に保育士が気をつけたい注意点

安全対策としてさまざまな講習や訓練を行うことはもちろん大事ですが、お散歩を安全で楽しいものにするためにもっとも大切なのは、実際にお散歩をしている最中の保育士の行動です。
では、お散歩中の保育士は、どのような点に気をつければ良いのでしょうか。ここでは注意点を6つご紹介します。

横断歩道は安全なタイミングを見計らって渡る

お散歩中の注意点横断歩道はやはり、特に注意が必要な場所です。急がず無理せず、子どもの足でも青信号のうちに渡りきれるタイミングで渡るようにしましょう。

信号待ちは車道から離れた場所でする

信号待ちをする際、車道に面した場所で待つと交通事故に遭うリスクが高まります。できるだけ車道から離れた、ガードレールなどの後ろで待つようにしてください。

歩道も内側を歩き、広がらないよう注意する

歩道を歩く際も、車道側を開けてできるだけ内側を歩くように指導しましょう。
また、歩道の幅の目いっぱいに広がって歩いていると、一般の通行人の方に迷惑が掛かってしまいます。向かい側から自転車や歩行者が来ても大丈夫なように、最低でも人1人分のスペースを開けて歩くようにしてください。

すれ違う方に率先して挨拶をしよう

近所にお住まいの方やお散歩コースの途中にある八百屋さんなど、顔見知りの方を見つけたら率先して挨拶をしましょう。気持ちよく挨拶を交わすことの大切さを、園児のお手本として見せていきます。

お散歩の楽しみが増すような声掛けを

園児たちがお散歩を楽しめるよう、草花や虫、動物などに目を向けるような声掛けを実施していくことも大切ですね。「風がぴゅーぴゅー吹いてきたね」「おひさまが雲から出てきたね」など気候を感じるような声掛けも行っていくと、子どもの表現力が伸びていきます。

園児に疲れが見えてきたときの対策も

公園で遊んだ帰りなど、園児が疲れた様子を見せることもあるでしょう。疲れたからといって肩を落としたり下を向いたりして歩いていると危険です。
みんなで歌をうたったり、保育士がクイズを出したりといった疲れを忘れさせるような対策も考えておくと、保育園に帰るまでみんなでお散歩を楽しむことができますね。

まとめ

今回は、保育園のお散歩について考えてみました。
保育園の外を歩くお散歩では、大津市の交通事故や川崎市の通り魔事件のような未然に防ぐことが難しい事態も起こりえますが、事前学習や散歩中の注意を怠らないことにより、ある程度は危険を回避することができます。
散歩はさまざまな学びを得られる、園児にとって大切で必要なもの。安全に配慮しつつ園児がこれからもお散歩を楽しめるように安全対策や日々の配慮を実施していきましょう。

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タグ : お散歩
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キララサポート編集部

キララサポート編集部

保育士・看護師専門の転職支援サービス「キララサポート」がお役立ち情報を発信中!運営会社である株式会社モード・プランニング・ジャパンは全国で保育施設「雲母保育園」を展開しており、医療と保育現場、そして転職活動のプロフェッショナルとして情報を提供しています。