療育とは?保育士が知っておきたい発達支援と子どもの気になる行動20選

公開日: 更新日: お役立ちコンテンツ , 保育 , 保育の仕事 , 保育の基礎知識 , 保育士の資格取得

目次

保育士なら経験することも多い「気になる子どものこんな場面」、ありませんか?

朝8時30分。子どもたちが元気に登園し、一日が始まります。

「○○ちゃん、おはよう!」

そう声を掛けると、多くの子どもたちは笑顔で「おはよう!」と返してくれます。
保護者から離れるのが寂しくて泣いてしまう子もいれば、お友達を見つけてすぐに遊び始める子もいます。

一方で、何度名前を呼んでも反応がなく、お気に入りのおもちゃを見つめ続けている子どもに出会ったことはありませんか。
朝の会では、一人だけ窓の外を眺めている。
制作活動では、座っていることが難しく、何度も席を立ってしまう。
給食では白いご飯しか食べられず、野菜を見るだけで泣いてしまう。
お片付けの時間になると突然大泣きし、「まだ遊びたい」と床に寝転がってしまう。
園庭では友達と遊ぶよりも、一人でタイヤを何度も回し続けている。
保育士として働いていると、このような姿を目にすることは決して珍しいことではありません。

「どう関われば安心して過ごせるのだろう。」
「私の声掛けがよくないのかな。」
「もっとこの子に合った方法があるのではないだろうか。」
毎日子どもたちと向き合う保育士だからこそ、一度はそんな悩みを抱えた経験があるのではないでしょうか。

子どもの「困った行動」の背景を考えたことはありますか?

保育現場では、「困った行動」と感じる場面が少なくありません。

  • 何度声を掛けても反応がない
  • 順番を待てずに飛び出してしまう
  • 友達を叩いてしまう
  • 急な予定変更で泣き続けてしまう
  • 特定の食べ物しか食べない
  • 友達と遊ばず一人遊びが多い

忙しい保育現場では、「どうしてできないの?」「何度言っても伝わらない」と感じてしまうこともあるかもしれません。
しかし、その行動には子どもなりの理由や困り感が隠れていることがあります。
例えば、活動の切り替えが難しい子どもは、「わがまま」なのではなく、急な予定変更に強い不安を感じているのかもしれません。
給食で決まったものしか食べられない子どもは、好き嫌いではなく、食感や匂いなどの感覚に敏感なのかもしれません。
落ち着いて座っていられない子どもも、「話を聞く気がない」のではなく、身体を動かすことで安心している可能性があります。
このように、子どもの姿を「できる・できない」で見るのではなく、「なぜこの行動をしているのだろう」という視点で見ることが、保育士には求められています。

保育士だからこそ気付ける「小さなサイン」

子どもと長い時間を一緒に過ごす保育士は、誰よりも子どもの変化に気付ける存在です。

朝の表情。
遊び方。
友達との関わり。
食事の様子。
活動への参加の仕方。

毎日の積み重ねを見ているからこそ、「いつもと違う」「少し気になる」と感じることができます。
厚生労働省の『保育所保育指針解説』でも、保育士には子どもの発達を理解し、一人ひとりに応じた援助を行うことが求められています。

また、こども家庭庁の『児童発達支援ガイドライン』では、子どもの困り感や背景を理解し、その子どもに合った支援を行うことの重要性が示されています。つまり、保育士に必要なのは、「障害があるかどうか」を判断することではありません。
その子が何に困っているのかを理解し、「安心して過ごせる環境」を考えることです。

その視点が「療育」につながります

近年、「療育」という言葉を耳にする機会が増えました。
療育とは、発達に特性のある子どもや発達が気になる子どもに対して、一人ひとりに合わせた支援を行い、「できた」という経験を積み重ねながら成長を支える取り組みです。保育園で働く中で、「もっと一人ひとりと丁寧に関わりたい」「発達についてもっと学びたい」と感じ、療育の世界へ進む保育士も年々増えています。
では、実際の保育現場では、どのような場面で「子どもへの支援」が必要だと感じるのでしょうか。

次の章では、多くの保育士が実際に経験している「こんな場面ありませんか?」という20の場面を紹介します。

ポイント

この記事で紹介する内容は、障害の有無を判断するためのものではありません。
発達には大きな個人差があります。子どもの姿を継続的に観察し、「その子に合った関わり方」を考えるための視点としてご覧ください。

保育現場で「こんな場面ありませんか?」療育につながる20の場面

保育現場では、子ども一人ひとりの発達や個性の違いによって、さまざまな姿が見られます。
その中には、「どうしてこの子はこうするのだろう?」「どんな声掛けをすればいいのだろう?」と、保育士が関わり方に悩む場面もあるのではないでしょうか。
ここでは、保育士が日々の保育で気づきやすい20の場面のうち、まず10の場面を紹介します。

ただし、ここで紹介する行動が見られたからといって、発達障害などの診断につながるわけではありません。子どもの発達には個人差があり、体調や環境、経験などによっても行動は変わります。
大切なのは、一つの行動だけを見るのではなく、どのような場面で、どのくらいの頻度で、どの程度困っているのかを継続して観察することです。

1.「○○ちゃん」と呼んでも、なかなか振り向かない

朝の会や給食の時間など、「○○ちゃん」と名前を呼んでも、振り向かなかったり、保育士の方を見なかったりすることはありませんか?
何度か呼びかけると反応することもありますが、周囲の子どもたちが一斉に振り向いている中で、その子だけ遊びを続けていることもあります。

もちろん、遊びに夢中になっていて聞こえていないこともあります。しかし、さまざまな場面で名前を呼ばれても反応しにくい状態が続く場合には、周囲からの呼びかけに注意を向けることに難しさがある可能性も考えられます。

保育士が見ておきたいポイント

「名前を呼んだら反応するか」だけではなく、好きな遊びをしているとき、集団活動中、戸外で遊んでいるときなど、どのような状況で反応しやすいのかを観察してみましょう。
また、聴力など別の要因が関係している可能性もあるため、一つの行動だけで発達特性を判断しないことが大切です。

2.「見て見て!」が少なく、一人で遊び続けている

自由遊びの時間、周りの子どもたちは「先生、見て!」と作品を見せたり、「一緒に遊ぼう」と友達を誘ったりしています。
その一方で、一人で黙々と遊び続けている子どもはいませんか?

例えば、ミニカーを走らせるのではなく、きれいに一列に並べる。ブロックを同じ形に積み上げ続ける。タイヤを回して、その動きをじっと見つめる。

一人遊びそのものは、子どもの発達の中で自然に見られるものです。
ただ、友達への関心がほとんど見られない、他の遊びに誘っても興味を示さないといった姿がさまざまな場面で続く場合には、他者との関わり方に特徴があるのかもしれません。

保育士が見ておきたいポイント

「友達と遊べるか」だけを見るのではなく、友達の遊びを見ているか、同じ空間で遊ぶことはできるか、保育士と遊びを共有できるかなど、関わり方を細かく観察することが大切です。

3.欲しいものを指ささず、保育士の手を引っ張る

「あのおもちゃが欲しい」と思ったとき、指をさして伝える子どももいれば、保育士の手を取って、おもちゃのところまで連れていく子どももいます。

例えば、棚の上にあるおもちゃが欲しくなると、言葉や指さしで伝えるのではなく、保育士の手を引っ張って棚の前まで連れていくことがあります。

このように、相手の手を使って自分の要求を伝える行動は「クレーン現象」と呼ばれることがあります。
言葉で伝えることがまだ難しい年齢の子どもにも見られるため、これだけで発達上の問題があるとは言えません。

保育士が見ておきたいポイント

「手を引っ張る」という行動だけではなく、指さし、視線、身振り、言葉などを使って自分の気持ちや要求を伝えようとしているかを合わせて見ていきましょう。

例えば、保育士が「これが欲しいの?」と確認したときに、うなずく、指をさす、視線を向けるなど、別の方法で意思を伝えられるかも重要な観察ポイントです。

4.友達との距離が近すぎる、または関わりが少ない

お友達と遊んでいるとき、相手のすぐ近くまで顔を近づけたり、急に抱きついたり、相手が嫌がっていることに気づかず触り続けたりすることはありませんか?
反対に、友達が「一緒に遊ぼう」と誘っても興味を示さず、いつも一人で過ごしている場合もあります。

友達との距離感や関わり方には、子どもによって大きな違いがあります。
しかし、相手の反応を読み取ることや、その場に合った距離を保つことが継続して難しい場合には、対人関係において何らかの支援が必要になることがあります。

保育士が見ておきたいポイント

「友達と仲良くできない」と捉えるのではなく、相手の表情や反応をどの程度理解できているかを見てみましょう。
「今、お友達はどう思っているかな?」など、具体的な言葉で状況を伝えることで、少しずつ相手の気持ちを理解しやすくなることがあります。

5.お友達が泣いていても、気づいていないように見える

保育室でお友達が転んで泣いています。
周りの子どもたちは「大丈夫?」と声を掛けたり、先生のところへ知らせに来たりします。
ところが、一人だけいつもと変わらず遊び続けている。

このような場面に出会うこともあります。
「お友達の気持ちが分からないのかな?」と感じるかもしれませんが、子どもによっては、相手の表情や状況から気持ちを読み取ることに時間がかかる場合があります。

保育士が見ておきたいポイント

「共感できない」と決めつけるのではなく、状況を具体的に伝えたときにどのような反応をするかを見てみましょう。
「○○ちゃん、転んで痛かったみたいだね」「泣いているね」と保育士が言葉にすることで、相手の状況を理解するきっかけをつくることができます。

6.うれしいときや興奮したときに、手をひらひらさせる

好きな遊びを見つけたときや、楽しみにしていた活動が始まったときに、手をひらひらさせたり、手首を繰り返し動かしたりする子どもがいます。
また、つま先立ちになって歩いたり、同じ動きを何度も繰り返したりする姿が見られることもあります。
こうした繰り返しの動きは、子どもが興奮したときや気持ちを落ち着かせたいときなどに見られることがあります。

保育士が見ておきたいポイント

「やめさせなければ」とすぐに考えるのではなく、どのようなときにその動きが出るのかを観察しましょう。
嬉しいとき、緊張しているとき、待っているときなど、行動が出る場面を把握することで、その子どもの状態を理解する手がかりになります。

7.ミニカーを走らせず、並べたりタイヤを回したりする

「ミニカーで遊ぼう」と思っても、子どもによって遊び方はさまざまです。
道路を作って車を走らせる子どもがいる一方で、ミニカーを一台ずつきれいに並べたり、車をひっくり返してタイヤを回したりすることがあります。

同じ遊びを長時間繰り返し、他の遊びにはほとんど興味を示さない場合もあります。
特定の物の一部分や動きに強い興味を持つことは、発達特性を理解するうえでの一つの観察ポイントになることがあります。

保育士が見ておきたいポイント

「普通の遊び方と違う」と考えるのではなく、その遊びを通して何を楽しんでいるのかを考えてみましょう。

例えば、タイヤの回転が好きなのであれば、その興味を活かして「一緒に車を走らせてみよう」と遊びを広げることもできます。

8.いつもと違う道や順番になると、強く嫌がる

いつもの散歩コースを変更した日。
「今日はこっちから行こう」と保育士が伝えると、突然その場から動かなくなったり、大声で泣き出したりすることがあります。

活動の順番が変わった、おもちゃを置く場所が変わった、給食のお皿の位置がいつもと違う。
大人から見ると小さな変化でも、子どもにとっては大きな不安につながることがあります。

保育士が見ておきたいポイント

予定変更が必要な場合には、できるだけ早めに伝える、写真や絵などで次の予定を見せる、変更後の流れを具体的に説明するといった工夫が役立つ場合があります。
「なぜできないの?」ではなく、「見通しが持てないことが不安なのかもしれない」と考えることが支援の第一歩です。

9.遊びから次の活動への切り替えが難しい

「そろそろお片付けの時間です。」そう声を掛けると、ほとんどの子どもが少しずつおもちゃを片付け始めます。

しかし、中には「まだ遊びたい!」と泣き出したり、おもちゃを離さなかったり、床に寝転んでしまったりする子どももいます。
活動の切り替えが難しい子どもにとって、遊びを突然終わらせることは、大人が考える以上に大きな負担になることがあります。

保育士が見ておきたいポイント

「片付けなさい」と繰り返し伝えるだけではなく、「あと5分遊んだらお片付け」「この遊びが終わったらおしまい」など、終わりを具体的に知らせる方法があります。
タイマーや絵カードなどを使い、目で見て次の活動が分かるようにすることも、その子に合った支援の一つです。

10.朝の会や読み聞かせで、じっと座っていることが難しい

朝の会が始まり、みんなが椅子に座っています。
ところが、何度も立ち上がったり、教室の中を歩き回ったり、外へ飛び出そうとしたりする子どもがいます。
「落ち着きがない」「話を聞いていない」と感じるかもしれません。
しかし、長時間座っていることや、周囲の刺激を抑えて一つの活動に集中すること自体が難しい子どももいます。

保育士が見ておきたいポイント

「最後まで座らせる」ことだけを目標にするのではなく、座る時間を短くする、座る場所を工夫する、活動に身体を動かす要素を取り入れるなど、その子どもが参加しやすい環境を考えることが大切です。

例えば、読み聞かせの前に少し身体を動かす時間を設けたり、保育士の近くで座れるようにしたりすることで、活動に参加しやすくなることがあります。

大切なのは「できない理由」を探すこと
ここまで紹介した10の場面は、子どもを評価したり、障害の有無を判断したりするためのチェック項目ではありません。
「なぜこの行動が起きているのだろう」「どんな環境なら安心できるだろう」と考えるための観察ポイントです。
保育士が子どもの行動の背景に目を向けることで、声掛けや環境設定など、具体的な支援方法も見えてくることがあります。

そして、こうした「一人ひとりの発達や特性を理解し、その子に合った方法で成長を支える」という考え方は、療育の現場でも大切にされています。

次のブロックでは、残り10の場面として、感覚の過敏さ、姿勢や身体の使い方、不器用さ、言葉の特徴、感情のコントロール、危険の認知など、保育士が気づきやすい場面を詳しく紹介します。

保育現場で「こんな場面ありませんか?」⑪~⑳

前のブロックでは、名前を呼んでも反応しにくい、友達との関わりが難しい、活動の切り替えが苦手など、保育士が日々の保育の中で気づきやすい10の場面を紹介しました。ここからは、さらに感覚の過敏さ、食事、着替え、午睡、身体の使い方、言葉、感情のコントロールなどに関する10の場面を紹介します。

子どもの行動には、その子なりの理由があります。「どうしてできないのだろう」と考えるだけでなく、「何が苦手なのだろう」「何があれば安心できるのだろう」と視点を変えてみることが、支援を考えるきっかけになります。

11.大きな音がすると、耳をふさいでその場から離れようとする

避難訓練のサイレン、運動会の音楽、楽器の音、突然の大きな声。
保育園では、日常生活の中でさまざまな音が発生します。
そんなとき、一人だけ両手で耳をふさいだり、「うるさい!」と泣き出したり、部屋の隅に逃げようとしたりする子どもはいませんか?
大きな音が苦手な子どもにとって、周囲にとっては「少し大きな音」であっても、非常に強い刺激として感じられている場合があります。

保育士が見ておきたいポイント

「音に慣れさせよう」と無理にその場に留めるのではなく、どのような音が苦手なのか、どの程度の音で反応するのかを観察してみましょう。
また、音が鳴ることを事前に伝えたり、少し離れた場所から参加できるようにしたり、必要に応じて静かな場所へ移動できるようにするなど、環境を調整する方法もあります。子どもが耳をふさぐことを「参加したくない」と捉えるのではなく、「刺激が強すぎて困っているのかもしれない」と考えることが大切です。

12.服のタグや特定の素材を嫌がり、着替えに時間がかかる

「お着替えしようね」と声を掛けても、なかなか服を着ようとしない。
ようやく着替え始めたと思ったら、「この服は嫌!」と泣いてしまう。
よく見ると、服のタグを嫌がっていたり、特定の素材だけを避けていたり、靴下の縫い目を何度も気にしていたりすることがあります。
大人からすると「同じ服なのだから着られるのでは?」と思ってしまいますが、子どもによっては、肌に触れる感覚そのものが大きな負担になっている場合があります。

保育士が見ておきたいポイント

着替えに時間がかかることだけを見るのではなく、どの衣服を嫌がるのか、どの部分を気にしているのかを確認してみましょう。
本人が選べるように複数の服を用意したり、苦手な素材を避けたりすることで、着替えへの抵抗感が軽減される場合があります。

13.給食で「これしか食べない」という状態が続いている

給食の時間になると、毎日同じものだけを食べている。
白いご飯は食べられるけれど、野菜は一口も食べられない。
柔らかいものは食べられるけれど、硬いものや噛み応えのあるものは口から出してしまう。
このような姿を見て、「好き嫌いが多い子」と考えてしまうこともあるかもしれません。

しかし、食べ物の味だけではなく、匂い、温度、食感、見た目、口の中での感覚などが関係している場合もあります。

保育士が見ておきたいポイント

「一口だけでも食べてみよう」と無理に勧めるのではなく、どのような食感や匂いを嫌がるのかを観察してみましょう。
食べられるものを把握したうえで、形や量を変えるなど、無理のない範囲で経験を広げていくことも大切です。
また、食事に関する困りごとは、発達面だけでなく身体的な要因が関係することもあるため、必要に応じて保護者や専門職と情報を共有することも重要です。

14.お昼寝の時間になっても、なかなか眠れない

午睡の時間。部屋を暗くして、みんなが布団に入っています。

ところが、一人だけなかなか眠れず、何度も起き上がったり、布団の上を動き回ったりしています。
「早く寝ようね」と声を掛けても眠れず、周囲の子どもが眠っていることで、さらに動きにくくなってしまうこともあります。
睡眠のリズムには個人差があり、午睡の必要性も子どもによって異なります。

保育士が見ておきたいポイント

眠れないことだけを問題にするのではなく、部屋の明るさ、音、温度、周囲の子どもの動き、布団の感触など、眠りを妨げる要因がないかを考えてみましょう。
「寝なければならない」と強く求めるのではなく、静かに横になる、絵本を見るなど、その子どもが落ち着いて休める方法を検討することもできます。

15.階段や段差、遊具などで身体の動かし方に不器用さが見られる

園庭の遊具で遊ぶ時間。周りの子どもたちはスムーズに階段を上ったり、両足でジャンプしたりしています。
その中で、階段を一段ずつ慎重に上る、片足立ちが難しい、ボールをうまく投げられない、何度も転んでしまうといった子どもがいます。
身体の発達には個人差があるため、年齢だけで「できる・できない」を判断することはできません。

一方で、運動遊びや日常生活のさまざまな場面で、身体の動かし方に継続した難しさが見られる場合には、その子どもに合った環境や援助を考える必要があります。

保育士が見ておきたいポイント

「運動が苦手」とまとめてしまうのではなく、どの動作が難しいのかを具体的に見てみましょう。

例えば、「ジャンプができない」のであれば、両足を同時に床から離すことが難しいのか、着地が怖いのか、身体のバランスを取ることが難しいのかによって、必要な支援は変わります。

できる動作から少しずつ経験できるよう、遊びの中に取り入れていくことが大切です。

16.手先を使う活動に時間がかかる

折り紙、はさみ、シール貼り、ボタンを留める、靴を履く。
保育園では、手先を使う活動がたくさんあります。
その中で、周囲の子どもがすぐにできることでも、一人だけ非常に時間がかかったり、何度やってもうまくいかなかったりすることがあります。

「不器用だから仕方ない」と考えることもできますが、手先の動きや目と手を協調させることに難しさがある場合もあります。

保育士が見ておきたいポイント

できないことを繰り返し練習させるだけではなく、道具の大きさや持ちやすさ、作業の手順、課題の量を調整してみましょう。

例えば、最初から細かい折り紙を扱うのではなく、大きな紙を使う、はさみを使う前に手でちぎる経験を取り入れるなど、難易度を下げることで「できた」という経験につなげられることがあります。

17.思い通りにならないと、気持ちを切り替えるまでに時間がかかる

「今日は雨だから、園庭には行けません。」
保育士がそう伝えた瞬間、「いや!」と大声で泣き出してしまう。
その後もなかなか気持ちを切り替えられず、長い時間泣き続けることがあります。

また、お友達におもちゃを取られたときや、自分の思い通りに遊べなかったときに、物を投げたり、床に寝転んだりすることもあります。
こうした姿は、単に「わがまま」ということではなく、自分の気持ちを整理したり、言葉で表現したりすることがまだ難しいために、行動として表れている場合があります。

保育士が見ておきたいポイント

感情が大きくなっている最中に「泣かないの」「もう終わり」と説得するよりも、まずは安全を確保し、落ち着ける環境をつくることが大切です。
落ち着いてから、「楽しみにしていたから悲しかったんだね」「雨だから今日はお外に行けないんだ」と、子どもの気持ちや状況を言葉にしてあげることで、感情を整理する手助けになることがあります。

18.危険な場所や行動に気づきにくい

園庭で遊んでいるとき、走っている友達のすぐ前を横切る。
高いところから飛び降りようとする。
道路や駐車場など、危険が伴う場所でも急に走り出してしまう。
保育士が「危ない!」と止める場面が何度もあると、「どうして危険が分からないのだろう」と感じることがあります。
子どもは経験を通して危険を学んでいきますが、危険を予測することや、周囲の状況を把握することに難しさがある場合もあります。

保育士が見ておきたいポイント

「危ないからやめよう」と抽象的に伝えるだけではなく、何が危険なのかを具体的に伝えることが重要です。
「走ったら危ない」ではなく、「ここは車が通るから、先生と一緒に歩こう」のように、具体的な行動を伝えます。
また、危険な場所への動線を見直したり、子どもが安全に遊べる環境を整えたりすることも支援の一つです。

19.言葉で気持ちを伝えることが難しく、行動で表現する

お友達が使っているおもちゃが欲しい。
でも、「貸して」「使いたい」と言葉で伝えることが難しい。
すると、突然お友達からおもちゃを奪ったり、押したり、叩いたりしてしまいます。
保育士としては「叩いてはいけない」と伝える必要がありますが、その行動だけを止めても、同じことが繰り返される場合があります。

その背景には、「欲しい」「嫌だ」「やめて」といった気持ちを言葉で伝えることの難しさがあるかもしれません。

保育士が見ておきたいポイント

行動を止めるだけではなく、「貸してほしかったんだね」「『貸して』って言ってみよう」と、代わりとなる伝え方を具体的に教えていきましょう。
言葉だけでなく、指さしや絵カード、ジェスチャーなど、その子どもが使いやすい方法を取り入れることもできます。

20.同じ質問や言葉を何度も繰り返す

「今日、お外行く?」
「今日、お外行く?」
「今日、お外行く?」

保育士が答えても、何度も同じ質問を繰り返す子どもがいます。
また、テレビや絵本で聞いた言葉を、場面とは関係なく繰り返したり、大人の言葉をそのまま繰り返したりすることもあります。
保育士からすると、「さっき答えたのに」と感じるかもしれません。

しかし、その繰り返しには、安心したい、確認したい、コミュニケーションを取りたいなど、子どもなりの意味がある場合があります。

保育士が見ておきたいポイント

繰り返す言葉だけを止めるのではなく、「何を確認したいのだろう」「何を伝えようとしているのだろう」と考えてみましょう。

例えば、予定を何度も確認するのであれば、絵や写真を使って一日の流れを見えるようにすることで、安心できる場合があります。

20の場面から見えてくる「子どもの困り感」

ここまで、保育現場で見られる20の場面を紹介しました。

名前を呼んでも反応しない。
友達との関わりが難しい。
音や触感に敏感。
食事に強いこだわりがある。
活動の切り替えが難しい。
気持ちを言葉で伝えることが難しい。
身体の動かし方や手先の動作に難しさがある。

一つひとつの行動だけを見ていると、「困った行動」に見えるかもしれません。

しかし、少し視点を変えてみると、その行動の背景には、「うまく伝えられない」「刺激が強くてつらい」「次に何をするのか分からなくて不安」「どうやって遊べばいいのか分からない」といった、子ども自身の困り感が隠れている可能性があります。

「困った子」ではなく、「困っている子」かもしれない。
子どもの行動を変えることだけを考えるのではなく、その行動が起きている背景を理解する。
それが、一人ひとりに合った保育や発達支援を考えるための大切な視点です。

そして、このように子どもの発達や特性を理解し、その子に合った方法で生活や成長を支えていく考え方は、療育にもつながっています。
では、療育では具体的にどのような支援を行っているのでしょうか。
次のブロックでは、ここまで紹介した20の場面を「困った行動」で終わらせず、「困っている子」という視点から、保育士ができる支援や療育の考え方について詳しく解説します。

「困った子」ではなく「困っている子」かもしれません

紹介してきた場面の中で、「うちの園にも似たような子がいる」と感じた方もいるのではないでしょうか。

例えば、
何度声を掛けても活動に参加しない子ども。
お片付けになると泣いてしまう子ども。
友達とのトラブルが何度も起こる子ども。
給食で決まったものしか食べられない子ども。

保育士として毎日子どもたちと向き合っていると、こうした姿に悩むこともあるでしょう。
しかし、ここで少し視点を変えてみてください。

「この子は、なぜ困った行動をするのだろう?」ではなく、「この子は、何に困っているのだろう?」
そう考えてみると、これまでとは違った子どもの姿が見えてくることがあります。

「わがまま」に見える行動にも理由がある

例えば、お片付けの時間になっても、なかなかおもちゃを片付けようとしない子どもがいるとします。
保育士が「もうおしまいだよ」「早く片付けよう」と何度声を掛けても、その子はおもちゃを離しません。
さらに声を掛けると、突然泣き出してしまう。
こうした場面では、「わがままを言っている」「言うことを聞いてくれない」と感じることがあるかもしれません。
しかし、その子にとっては、遊びを終わらせて次の活動へ移ること自体が難しいのかもしれません。

「今の遊びが終わったら何をするのか分からない」
「まだ遊びたい気持ちをどう整理すればいいのか分からない」
「突然終わりを告げられると不安になる」

このような背景があるとしたら、必要なのは「もっと早く片付けなさい」と叱ることではありません。

例えば、

  • 「あと5分でお片付けだよ」と事前に伝える
  • タイマーなどで終わりを見えるようにする
  • 「車を3台片付けたらおしまい」など具体的に伝える
  • 次に行う活動を写真や絵で示す

といった工夫が考えられます。
同じ「片付けられない」という姿でも、その背景を考えることで、保育士の関わり方は変わります。

「好き嫌い」だと思っていた食事にも理由があるかもしれない

給食の時間に、いつも同じものしか食べない子どもがいるとします。
「野菜も一口食べてみよう」「好き嫌いしないで食べよう」と声を掛けても、頑なに口を閉じてしまう。
保育士としては、「少しでも食べてほしい」と思うものです。

しかし、もしその子が、野菜の味だけではなく、食感や匂い、温度、見た目などに強い苦手さを感じていたらどうでしょうか。
本人にとっては、「食べたくない」のではなく、「食べることが難しい」のかもしれません。
その場合には、無理に食べさせることだけを考えるのではなく、

  • どの食感を嫌がるのか
  • 温かいものと冷たいもののどちらが苦手なのか
  • 匂いに反応しているのか
  • 見た目で拒否しているのか
  • 食べられるものにはどのような共通点があるのか

などを観察することが、支援を考える手がかりになります。

「落ち着きがない」のではなく、刺激が多すぎるのかもしれない

朝の会で、何度も立ち上がってしまう子ども。
「座ってね」と声を掛けても、すぐに動き出してしまいます。
「落ち着きがない」「集中できない」と考えてしまうこともあるでしょう。

しかし、その子にとって保育室は、たくさんの音や人の動き、視覚的な情報が同時に入ってくる場所なのかもしれません。

周囲の子どもの動きが気になる。
窓の外が気になる。
先生の声と友達の声が同時に聞こえる。
そうした刺激の中から、一つのことに注意を向け続けることが難しい場合があります。

この場合も、「集中しなさい」と伝えるだけではなく、

  • 座る場所を工夫する
  • 周囲の刺激を減らす
  • 活動時間を短く区切る
  • 身体を動かす活動を取り入れる
  • 指示を短く、具体的に伝える

など、その子が参加しやすい環境をつくることが支援につながります。

「友達を叩く」行動の背景を考えてみる

保育士にとって、友達を叩く、押す、物を投げるといった行動は、安全面からも見過ごすことのできない問題です。
もちろん、相手の安全を守ることは最優先です。
一方で、行動を止めた後に、「なぜこの行動が起きたのか」を考えることも重要です。

例えば、
友達が使っているおもちゃが欲しかったのかもしれません。
「貸して」と言葉で伝えることが難しかったのかもしれません。
友達との距離が近くなりすぎて、どう関わればいいのか分からなかったのかもしれません。
自分の気持ちを言葉にすることが難しく、結果として手が出てしまった可能性もあります。

このような場合、単に「叩かない」と伝えるだけではなく、
「貸して」「順番」「嫌だ」「やめて」など、代わりに使える言葉や行動を教えることが大切になります。
「してはいけないこと」を伝えるだけではなく、「どうすればいいのか」を具体的に伝えることが、子どもの成長を支えることにつながります。

子どもの行動を「観察する」ということ

では、保育士は子どものどこを見ればよいのでしょうか。
ポイントは、単純に「できる・できない」を記録することではありません。
「いつ」「どこで」「誰と」「何をしているときに」「どのような行動が起きたのか」を具体的に見ていくことです。

観察するポイント具体的に見ること
いつ朝・昼・夕方、活動の前後など
どこで保育室・園庭・給食室など
誰と一人・友達・保育士など
何をしているとき自由遊び・制作・食事・着替えなど
どんな行動か泣く・走る・叩く・固まる・繰り返すなど
その後どうなったか声掛けで落ち着く・場所を変えると落ち着くなど

例えば、「お片付けができない」と記録するだけでは、その子の困りごとは見えてきません。

「自由遊び終了の声掛けをすると、遊んでいたおもちゃを離せず泣く。次の活動を写真で提示すると、保育士と一緒に片付けることができた」と記録すれば、どのような支援が有効だったのかが分かります。
こうした日々の観察の積み重ねが、子ども一人ひとりに合った支援を考えるための重要な材料になります。

一人ひとりに合った支援を考えることが「発達支援」につながる

発達支援では、子どもの「できないこと」だけに注目するのではなく、その子どもの得意なことや興味、安心できる環境なども含めて考えることが大切です。

例えば、言葉で伝えることが苦手な子どもであれば、絵や写真、ジェスチャーなど別の方法で意思を伝えられるようにする。

活動の切り替えが苦手な子どもであれば、次に何をするのかを事前に知らせ、見通しを持てるようにする。
音に敏感な子どもであれば、刺激を避けられる場所を用意する。
身体を動かすことが好きな子どもであれば、その興味を活かして活動への参加につなげる。

このように、「子どもを環境に合わせる」のではなく、「子どもが参加しやすいように環境や関わり方を調整する」という視点が重要になります。

保育と療育は、目指している方向が違うわけではありません

ここで、「これは保育ではなく療育の話なのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、保育と療育はまったく別の考え方をしているわけではありません。

保育も療育も、子どもの発達や成長を支え、子どもが安心して生活できるようにすることを大切にしています。
違いがあるとすれば、療育では、発達に特性のある子どもや発達上の課題がある子どもに対して、より個別的・専門的に支援を考える機会が多いという点です。

例えば、保育園ではクラス全体で活動する中で、一人ひとりに必要な配慮を行います。
一方、児童発達支援などの療育の場では、子どもの発達段階や特性を踏まえながら、個別支援や小集団での活動を行うことがあります。

療育とは?子どもの「できた」を増やしていく支援

では、そもそも療育とはどのようなものなのでしょうか。
療育は、発達に特性のある子どもや発達に心配のある子どもに対して、その子どもの状態や発達段階に応じた支援を行い、生活や社会への参加を支えていく取り組みです。
療育というと、「できないことをできるようにする」というイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、療育で大切なのは、単純に苦手なことを克服させることだけではありません。

その子どもが安心して生活できること、得意なことを活かすこと、周囲とのコミュニケーションを広げること、できたという経験を積み重ねること。
こうした積み重ねを通して、子どもの成長を支えていくことが療育の大切な役割です。

療育を考えるときに大切な視点

  • 「なぜできないの?」ではなく「何が難しいの?」と考える
  • 子どもの行動だけでなく、その背景を見る
  • 苦手なことだけでなく、得意なことにも目を向ける
  • 子どもが安心できる環境を整える
  • 一人ひとりに合った伝え方・関わり方を考える

こうした考え方に触れると、「もっと発達支援について学びたい」「一人ひとりの子どもと、もっとじっくり関わってみたい」と感じる保育士もいるのではないでしょうか。

実際に、保育園での経験を活かして児童発達支援や療育の仕事に転職する保育士もいます。
では、保育園と療育施設では、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

次のブロックでは、「保育園と療育施設の違い」「児童発達支援とは何か」「療育で保育士はどのような仕事をするのか」について、保育士の視点から詳しく解説します。

療育の仕事で保育士の経験はどう活かせる?

ここまで読んで、「療育についてもっと知りたい」「発達支援の仕事に興味がある」と感じた保育士の方もいるのではないでしょうか。
一方で、こんな疑問を持つ方もいるかもしれません。

  • 療育の仕事って、保育園と何が違うの?
  • 保育士の資格や経験は活かせるの?
  • 療育施設ではどんな仕事をするの?
  • 発達障害について詳しくないけれど大丈夫?
  • 児童発達支援で働くには特別な資格が必要なの?

実は、保育園で子どもたちと向き合ってきた経験は、療育や発達支援の現場でも活かすことができます。

保育士の「子どもを見る力」は療育でも大切

療育の現場で大切なのは、子どもの行動だけを見ることではありません。
「この子は何が好きなのか」
「どんなときに安心しているのか」
「どんな場面で困っているのか」
「どんな伝え方なら理解しやすいのか」
こうしたことを一人ひとり観察し、その子に合った関わり方を考えていく必要があります。
これは、保育士が日々の保育で行っていることとも共通しています。

例えば、保育園で「○○ちゃんは、みんなの前では話さないけれど、1対1になるとよく話してくれる」と気づいたとします。

その気づきがあれば、無理にみんなの前で発表させるのではなく、まずは保育士と1対1で話す機会をつくるなど、その子に合わせた関わり方を考えることができます。
療育でも同じように、子どもの姿を丁寧に観察し、その子に合った支援方法を考えることが重要になります。

保育園と療育施設では「集団の大きさ」や「支援の方法」が異なる

保育園では、クラスという集団の中で子どもたちを支援します。

例えば、20人前後の子どもたちが一緒に遊び、食事をし、散歩に出かけ、行事に参加します。

その中で保育士は、一人ひとりの発達や個性に配慮しながら、クラス全体の活動を進めていきます。
一方、児童発達支援などの療育の現場では、子どもの発達段階や特性に応じて、より個別的な支援や小集団での活動を行うことがあります。

項目保育園療育・児童発達支援
主な対象就学前などの子ども発達に特性や支援ニーズのある子どもなど
活動生活・遊び・行事など発達や生活に合わせた支援・活動など
集団クラス単位での活動が中心個別・小集団での活動など
支援集団の中で一人ひとりに配慮子どもの特性や課題に応じた支援
連携保護者・職員など保護者・職員・専門職など

もちろん、実際の仕事内容や支援方法は事業所によって異なります。
そのため、「療育施設なら必ずこの働き方」というわけではありません。

児童発達支援ではどんなことをするの?

療育に興味を持った保育士が、まず知っておきたいのが「児童発達支援」です。
児童発達支援は、主に未就学の子どもを対象として、発達や生活上の課題に応じた支援を行うサービスです。
事業所によって具体的なプログラムは異なりますが、例えば次のような活動があります。

  • 自由遊びを通した子どもとの関わり
  • 小集団での遊び
  • 身体を使った運動遊び
  • 制作活動
  • 絵本や手遊び
  • 生活習慣に関する支援
  • コミュニケーションの支援
  • 社会性を身につけるための活動

こうした活動を通して、「できること」を増やすだけでなく、子どもが安心して人と関わったり、遊んだり、生活したりできるよう支援します。

保育士が療育で活かせる経験①「遊びを発達につなげる力」

保育士は、日々の遊びを通して子どもの成長を支えています。

例えば、積み木で遊んでいる子どもがいたとします。

ただ積み木を積んでいるだけに見えても、そこには「手先を使う」「目で位置を確認する」「力加減を調整する」「形を認識する」など、さまざまな経験があります。
療育でも、遊びは重要な支援の手段になります。

例えば、ボール遊びであれば、身体を動かすことだけが目的ではありません。

  • 「順番を待つ」
  • 「相手を見る」
  • 「ボールを渡す」
  • 「ありがとうを伝える」
  • 「ルールを理解する」

など、遊びの中でさまざまな経験を積むことができます。
「子どもが楽しく遊べる活動を考える」という保育士の経験は、療育でも大きな強みになります。

保育士が療育で活かせる経験②「子どもの変化に気づく力」

保育士は、毎日子どもを見ているからこそ、わずかな変化にも気づくことができます。

「今日はいつもより元気がない」
「昨日より友達との距離が近くなった」
「以前は嫌がっていた活動に参加できた」
「今日は自分から先生に話しかけてくれた」

こうした小さな変化を見つけることは、療育でも非常に重要です。
療育では、子どもの「できないこと」だけを見るのではなく、「以前はできなかったことが少しできるようになった」という小さな成長を見つけることも大切です。保育園で培ってきた観察力は、療育の現場でも活かすことができます。

保育士が療育で活かせる経験③「保護者とのコミュニケーション」

療育では、子どもへの支援だけでなく、保護者とのコミュニケーションも重要です。
保護者から、家庭での様子を聞くことがあります。

「家ではこんなことに困っています」
「最近、少し言葉が増えました」
「以前よりお友達に興味を持つようになりました」

こうした情報を聞きながら、園や事業所での子どもの姿と照らし合わせていきます。
保育士として保護者と関わってきた経験は、療育においても活かせる大切なスキルです。
特に、保護者の話を聞き、「できていないこと」だけではなく、「できるようになったこと」や「その子の良さ」も伝える姿勢は、信頼関係を築くうえで重要です。

保育士が療育で活かせる経験④「チームで子どもを支援する力」

療育の現場では、一人の保育士だけで子どもを支援するわけではありません。
事業所によっては、保育士、児童指導員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、心理職など、さまざまな専門職が関わることがあります。
それぞれの専門的な視点から子どもの姿を捉え、情報を共有しながら支援を考えていきます。

保育園でも、担任だけでなく、主任、園長、他クラスの保育士、看護師、栄養士などと連携して子どもを支援することがあります。
そのため、「一人で抱え込まず、周囲と情報を共有しながら子どもを支援する力」も、保育士が療育で活かせる経験の一つです。

療育の仕事で「保育士だからこそできること」がある

療育の仕事に興味を持つと、「発達障害について詳しくないと働けないのでは?」と不安になるかもしれません。
もちろん、療育の現場で働くためには、発達や障害、支援方法について学んでいくことが大切です。
一方で、保育士として身につけてきた、

  • 子どもの発達を見る力
  • 子どもと信頼関係を築く力
  • 遊びを考える力
  • 子どもの変化に気づく力
  • 保護者とコミュニケーションを取る力
  • 他の職員と連携する力

これらは、療育の現場でも活かすことができます。
つまり、療育へ転職することは、保育士としてこれまで積み重ねてきた経験を「ゼロからやり直す」ことではありません。

これまでの保育経験をベースに、発達支援という新しい専門性を身につけていく。
そんなキャリアのつくり方もあります。

「もっと発達支援を学びたい」と思ったら

ここまで読んで、「療育についてもっと勉強してみたい」「発達支援に関わる仕事をしてみたい」と感じた方もいるのではないでしょうか。

いきなり転職する必要はありません。
まずは、発達障害や発達支援について学んだり、児童発達支援の仕事内容を調べたり、実際の施設を見学したりすることから始めてもよいでしょう。
また、現在の保育園で発達が気になる子どもと関わる際にも、療育の視点を取り入れることができます。

例えば、明日からでも、次のようなことを意識してみてください。

  1. 子どもの行動をすぐに「問題」と決めつけない
  2. 「いつ・どこで・何が起きたのか」を観察する
  3. 子どもが得意なことや好きなことを探す
  4. 「できないこと」ではなく「できたこと」に目を向ける
  5. その子が分かりやすい伝え方を考える
  6. 環境を変えることで困りごとが減らないか考える
  7. 一人で抱え込まず、他の保育士と情報を共有する

こうした小さな積み重ねが、子どもへの発達支援につながります。

療育に興味を持った保育士へ
「もっと一人ひとりの子どもとじっくり関わりたい」
「発達について専門的に学びたい」
「保育士の資格を活かして発達支援の仕事をしてみたい」

そう感じるのであれば、児童発達支援や放課後等デイサービスなど、保育士の経験を活かせる発達支援の仕事について調べてみるのも一つの方法です。

では、実際に療育の仕事へ転職すると、保育園で働く場合と比べて、働き方や仕事内容はどのように変わるのでしょうか。
次のブロックでは、「療育の仕事に向いている保育士」「療育施設で働くメリット・注意点」「保育園から療育への転職を考えるときのポイント」について詳しく解説します。

療育に向いている保育士とは?転職前に知っておきたいこと

ここまで、保育現場で見られるさまざまな子どもの姿や、子どもの行動の背景を考えること、そして療育や発達支援について紹介してきました。
この記事を読んでいる方の中には、

  • 「もっと発達支援について学びたい」
  • 「一人ひとりの子どもとじっくり関わりたい」
  • 「保育士の経験を活かして療育の仕事をしてみたい」
  • 「児童発達支援の仕事が気になっている」

という方もいるのではないでしょうか。
最後に、療育の仕事に興味を持った保育士が知っておきたいポイントを整理します。

療育に向いている保育士とは?

「療育に向いている人」と聞くと、発達障害について詳しい人や、特別な専門知識を持っている人をイメージするかもしれません。
もちろん、療育の仕事では発達や障害、支援方法などについて学ぶことが大切です。
しかし、それだけが療育に向いている条件ではありません。
むしろ、日々の子どもの姿を丁寧に観察し、「なぜだろう?」と考えられることが大切です。

1.子どもの小さな変化に気づける人

昨日までは保育士に話しかけなかった子どもが、今日は自分から「先生」と呼んでくれた。
今までは嫌がっていた活動に、今日は少しだけ参加できた。
以前は友達の近くに行くことがなかった子どもが、今日は同じ遊びをしていた。

療育では、このような小さな変化を見つけることがとても大切です。
大きな「できた」だけではなく、昨日との違い、先週との違いに気づく力は、保育士がこれまでの仕事で培ってきた経験を活かせる部分です。

2.子どもの「なぜ?」を考えることが好きな人

「どうしてこの子は何度も同じことをするのだろう?」
「どうしてこの活動だけ嫌がるのだろう?」
「どうしたらこの子に伝わるのだろう?」

このように、子どもの行動の背景を考えることが好きな人は、療育の仕事との相性がよいでしょう。
療育では、同じ行動であっても、その背景が子どもによって異なることがあります。
そのため、「この方法が全員に合う」と決めつけるのではなく、子どもの反応を見ながら支援方法を調整していく姿勢が大切です。

3.「できないこと」より「できたこと」に目を向けられる人

保育の現場では、どうしても「できていないこと」に目が向きやすくなります。

着替えができない。
友達と遊べない。
活動に参加できない。
言葉で伝えられない。

しかし、療育では、その子どもが「できたこと」を見つけ、次の成長につなげていく視点が重要です。

例えば、今まで一人で遊んでいた子どもが、今日は保育士と一緒に3分間遊べたとします。
「まだ友達とは遊べない」と見るのではなく、「保育士と一緒に遊ぶことができた」という成長を見つけることができます。
こうした小さな成長を一緒に喜べる人は、療育の仕事にやりがいを感じやすいでしょう。

4.子どもに合わせて関わり方を変えられる人

保育園では、クラス全体に同じ説明をする場面が多くあります。一方、療育では、一人ひとりに合わせて伝え方を変えることがより重要になります。
言葉で伝わりやすい子どももいれば、写真や絵を見せた方が理解しやすい子どももいます。
一度にたくさん説明するより、短い言葉で一つずつ伝えた方が分かりやすい子どももいます。
「自分の伝え方を変えることで、子どもが理解しやすくなる」という柔軟な考え方が大切です。

保育士が療育へ転職するときに確認したいポイント

「療育の仕事をしてみたい」と思ったら、求人を見るときにもいくつか確認しておきたいポイントがあります。

① どの年齢の子どもを対象としているか

児童発達支援では、主に未就学の子どもを対象としますが、事業所によって対象年齢や支援内容は異なります。
「小さな子どもと関わりたい」のか、「就学前の子どもの発達支援に関わりたい」のかなど、自分がどのような子どもと関わりたいのかを考えてみましょう。

② 個別支援と集団支援のどちらが中心か

療育施設によって、個別支援を中心としているところ、小集団での活動を中心としているところなど、支援のスタイルはさまざまです。
求人票だけでは分からないこともあるため、面接や見学の際に確認しておくと安心です。

③ どのような専門職が働いているか

療育の現場では、保育士だけでなく、児童指導員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、心理職など、さまざまな専門職が関わる場合があります。
専門職から発達支援について学びたいという方は、どのような職種のスタッフが在籍しているのかを確認してみるとよいでしょう。

④ 研修制度があるか

「療育に興味はあるけれど、発達支援について詳しくない」という保育士の方も少なくありません。
その場合は、入職後の研修や勉強会、OJTなどが用意されているかを確認しましょう。
特に、療育未経験からスタートする場合には、「未経験でも応募できるか」だけでなく、「入職後にどのように学べるのか」まで確認することが重要です。

⑤ 実際の支援の様子を見学できるか

療育の仕事を検討するなら、可能であれば施設見学をおすすめします。
求人票には「子どもの発達支援」「個別療育」「集団療育」などと書かれていても、実際の雰囲気は施設によって大きく異なります。
子どもへの声掛けはどのように行われているのか。
保育士同士はどのように情報共有しているのか。
子どもが困ったとき、職員はどのように対応しているのか。
こうした点を実際に見ることで、自分に合った職場かどうかを判断しやすくなります。

療育への転職を考える保育士が気になるQ&A

Q. 保育士資格があれば療育施設で働けますか?

児童発達支援などでは、保育士資格を活かして働ける求人があります。
ただし、必要な資格や職員配置、仕事内容は事業所によって異なります。
応募する際には、求人情報に記載されている応募資格や仕事内容を確認しましょう。

Q. 療育未経験でも働けますか?

療育未経験から応募できる求人もあります。
ただし、未経験者を対象とした研修制度やOJTの内容は職場によって異なります。
「未経験OK」という言葉だけで判断せず、どのような研修やサポートがあるのかを確認することをおすすめします。

Q. 保育園と療育では、どちらが大変ですか?

どちらが大変かは一概には言えません。
保育園では、クラス全体を見ながら一人ひとりに配慮する力が求められます。

一方、療育では、子どもの特性や発達段階をより深く理解し、一人ひとりに合わせて支援方法を考えることが求められます。
仕事内容が異なるため、「どちらが楽か」ではなく、「自分はどのような働き方で子どもと関わりたいのか」という視点で考えることが大切です。

Q. 療育では保育士の経験を活かせますか?

はい。保育士として培ってきた、子どもの発達を見る力、遊びを考える力、保護者とのコミュニケーション、子どもの変化に気づく力などは、療育の現場でも活かすことができます。
さらに、療育について学ぶことで、保育士としての専門性を広げることにもつながります。

Q. 発達障害について詳しくありません。療育の仕事はできますか?

発達支援に関する知識は、療育の仕事をするうえで身につけていくことが大切です。
一方で、最初からすべてを知っている必要があるとは限りません。

職場によっては研修やOJTを通して学べる環境があります。
大切なのは、「分からないことを学びたい」という姿勢と、子どもの姿を丁寧に観察しようとする姿勢です。

保育士として「療育を学ぶ」ことは、今の保育にも活かせる

ここまで読んで、「療育の仕事に転職するかどうかはまだ分からない」という方もいるでしょう。
もちろん、すぐに転職を決める必要はありません。療育や発達支援について学ぶことは、現在の保育園で働き続ける場合にも役立ちます。

例えば、発達が気になる子どもに対して、

「どうしてできないの?」と考えるのではなく、
「何が難しいのだろう?」
と考える。

「言うことを聞かない」と捉えるのではなく、
「どう伝えたら、この子には分かりやすいだろう?」
と考える。

「落ち着きがない」と決めつけるのではなく、
「この子が落ち着いて過ごせる環境はどんな環境だろう?」
と考える。

このように、子どもの行動を見る視点が変わるだけでも、日々の保育は変わっていきます。

療育は「特別な子どもへの特別な支援」だけではありません。

子ども一人ひとりの発達や個性を理解し、その子が安心して過ごし、「できた」と感じられる環境をつくっていく。
その考え方は、保育にも共通しています。

まとめ|「この子にどう関わればいい?」という疑問が、療育を学ぶきっかけになる

保育士として子どもたちと向き合っていると、さまざまな「気になる姿」に出会います。

  • 何度呼んでも振り向かない
  • 友達との関わりが難しい
  • 活動の切り替えが苦手
  • 音や触感に敏感
  • 食べられるものが極端に少ない
  • 気持ちを言葉で伝えることが難しい
  • 身体の動かし方に不器用さがある
  • 思い通りにならないと強く感情を表す

こうした姿を見たとき、「困った行動」として終わらせるのではなく、
「この子は、何に困っているのだろう?」
と考えてみることが大切です。

その子どもが困っている理由を考え、環境や関わり方を工夫し、その子らしい成長を支えていく。
それが、発達支援や療育につながる大切な視点です。
そして、保育士がこれまで培ってきた「子どもを見る力」「遊びを考える力」「保護者と関わる力」は、療育の現場でも活かすことができます。

「もっと子ども一人ひとりの発達について学びたい」
「発達支援の専門性を身につけたい」
「保育士の経験を活かして療育の仕事に挑戦してみたい」

もしそう感じたのであれば、まずは療育や児童発達支援の仕事内容を調べたり、施設を見学したりするところから始めてみてはいかがでしょうか。

療育・発達支援の仕事に興味がある保育士の方へ

保育士資格やこれまでの保育経験を活かして、児童発達支援や療育などの仕事に挑戦するという選択肢もあります。

「療育に興味はあるけれど、どんな職場が自分に合うか分からない」
「未経験でも働ける療育の求人を知りたい」
「保育園と児童発達支援の働き方を比較したい」

そんな場合は、転職サービスを利用して求人情報を集めたり、キャリアアドバイザーに相談したりするのも一つの方法です。
転職を前提とせず、まずは仕事内容や求人について情報収集するところから始めてもよいでしょう。

保育士の求人・転職情報を見てみる

参考資料

  • 厚生労働省『保育所保育指針解説』
  • こども家庭庁『児童発達支援ガイドライン』
  • 国立特別支援教育総合研究所『発達障害のある子どもへの支援マニュアル』

※本記事は、子どもの発達や支援について理解を深めるための情報を提供することを目的としています。記事内で紹介した行動だけをもって、発達障害等の診断や判断を行うことはできません。子どもの発達について気になることがある場合は、保護者や園内の職員、必要に応じて専門機関などと連携しながら、一人ひとりの状況に応じた支援を検討してください。

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キララサポート編集部

キララサポート編集部

保育士・看護師専門の転職支援サービス「キララサポート」がお役立ち情報を発信中!運営会社である株式会社モード・プランニング・ジャパンは全国で保育施設「雲母保育園」を展開しており、医療と保育現場、そして転職活動のプロフェッショナルとして情報を提供しています。