世界で認められた認知症ケア『ユマニチュード』とは?介護における実践ポイント

2019.04.03介護の仕事

ヨーロッパを中心に世界中の医療施設で注目を集めている、フランス生まれの認知症ケアメソッド「ユマニチュード」。2012年に日本でも紹介され、その技術を実践しはじめる施設が増えています。

介護の現場では、患者さんがケアを嫌がったり、無反応だったりすることも多く、ケアをしている介護職や看護師が「患者さん自身のためになることなのに…」と罪悪感を抱きながらケアをしていることもありますよね。そしてその現状は、介護職・看護師離れの原因のひとつになってしまっています。 そんな中、ユマニチュードを実践した方からは、「患者さんがケアに協力的になり、介護のやりがいが増した」とのお声もあり、その効果は「魔法のようだ」と言われることも。

今回は、認知症の方や高齢者さんを笑顔にするだけでなく、介護職・看護師として働くみなさんをも笑顔に変える、「ユマニチュード」についてご紹介します。

※ユマニチュードを実践する活動のひとつ、福祉ネイルについては、「ネイルで笑顔の花が咲く!福祉ネイルが利用者さんに届ける“喜び・癒し”の種」で詳しく紹介しています。

「ユマニチュード」の基礎知識

ユマニチュードとは、技術だけの方法論でも、想いだけの精神論でもありません。「知覚・感情・言語による包括的コミュニケーションに基づいたケアの技法」とされており、さまざまな観点から患者さんに寄り添い、絆を深めるケアを行うメソッドです。

ユマニチュードの歴史

体育学の専門家であるイヴ・ジネストロゼット・マレスコッティという2人のフランス人が、医療施設で働くスタッフのケア、患者さんのケアの支援協力として活動を始めたのが1979年。その後、「人間は死ぬまで立って生きることができる」ことを掲げ、1980年にこれまでの経験から誕生したケア技法を「ユマニチュード」と名付けました。

ユマニチュードの哲学

ユマ二チュードという言葉に込められた意味は、「人間らしくあること」。体育学の専門家ならではの発想のもと、「生きているものは動く、動くものは生きる」という哲学が原点にあります。ケアを作業としてこなすのではなく、介護者が患者さんをひとりの人間として常に尊重し、コミュニケーションしながらケアを行うことが大切です。

【ユマニチュードの技術】「4つの柱」の実践ポイント

ユマニチュードの哲学をベースに、150もの実践技術が確立されている実用性も、ユマニチュードが世界で広まったポイントのひとつ。ここでは、患者さんに「あなたを見ています。大切に思っています」という想いを多角的に伝えることを目的とした、ケアの基本となる「4つの柱」をご紹介します。

見る

ここでの「見る」とは、患者さんと正面から目と目を合わせるアイコンタクト。話しかける時やケア中などにも目を合わせることで、「あなたが大切です」という想いが伝わります。

目を合わせる時には、相手の目線に水平の位置で、真正面から、なるべく近い距離で長い時間を意識し、優しさや信頼、愛情などを伝えます。横を向いている方にも、自分から相手の目線に入るように動いてみてください。そして目が合ったら、2秒以内に「こんにちは」などと声をかけるようにしましょう。

話す

患者さんの中には、話しかけても反応をしてくれない、反応できない人がいるかもしれません。だからと言ってこちらも無言でケアを行うのではなく、話しかけ続けることで相手の人間としての尊厳を守り、意識してもらうことができます。「これから手を拭きますね」「右手を伸ばしますね」など、ケアの実況中継をするように、ゆっくりと穏やかに話しかけてみましょう。

触れる

大切な人や物に触れる時のように、手のひら全体を使って広い面積をゆっくりなでるように触れることが大切です。手足などを移動させたい時には、下からそっと支えましょう。つかんだり、力を入れすぎたりすると、患者さんに「無理やりされた」と思われてしまうかもしれません。また、顔周りや手、下腹部など、敏感な部分やプライベートゾーンは急に触れないように気を付けましょう。

立つ

筋力の低下を防いだり、血液の循環を良くしたり、メリットがたくさんあります。患者さんに「まだ立てる」と思ってもらうことも、リハビリなど前向きな行動につながります。体を拭く際にベッドにつかまって立ってもらうなど、はじめは1分ほどの時間でもかまいません。徐々に立っている時間や回数を増やしていきましょう。

【ユマニチュードの技術】「5つのステップ」の実践ポイント

患者さんに必要なケアを提供しているのに嫌がられてしまい、悩んでしまうこともありますよね。ユマニチュードでは、介護者と患者さんの絆を強くし、双方にとって「良かった」と思えるケアを目指しています。そのために大切な、訪問からケアを行い、部屋を去るまでの「5つのステップ」をご紹介します。

ステップ① 出会いの準備

友人の家を訪ねる時、インターホンを押して返事を待ちますよね。患者さんを訪ねる時も、そのマナーは同じ。まずは自分が来たことを知らせて、返事を待ちましょう。流れは以下の通りです。

⑴ ドアを3回ノックする

⑵ 3秒待つ

⑶ もう一度、ドアを3回ノックする

⑷ 3秒待つ

⑸ 1回ノックしてから部屋に入る

⑹ ベッドボードをノックする

数回ノックすることで、患者さんが寝ていた場合などでも来客が来たことを理解してもらえます。もちろん、1度目のノックで患者さんから返事があれば、そのまま入って大丈夫。 また、大部屋の場合はカーテン越しに名前を呼び、壁や足元のベッドボードをノックして反応を待ちましょう。

ステップ② ケアの準備

ケアの前に了承をとります。このステップを経ることで、ケア中の攻撃的な行動を83%も減らせたという調査結果もあるほど、介護者、患者さんともに大切な行程です。

前述の「4つの柱」で紹介した「見る」「話す」「触れる」を実践しながら、「暖かくなってきましたね」など、ケアの内容には触れずに会話をしましょう。そうすると、「あなたに会いにきた」という印象を与えることができます。少し会話をした後に、「お話のついでに体を拭きましょうか」など、ケアを行っていいかどうかを確認します。もし、ケアを嫌がる状態が3分以上続いた場合は、無理強いせずにあきらめましょう。その時の嫌がり方から、30分後や半日後などに、もう一度ステップ①からチャレンジします。

ステップ③ 知覚の連結

「見る」「話す」「触れる」を意識して、ケアを行います。この3つは視覚・聴覚・触覚に働きかけるので、すべてで「優しさ」「穏やかさ」を意識しましょう。それが「知覚の連結」です。例えば、声は優しいのに、力ずくで体を動かしたりすると、それぞれで違う印象を与えてしまい、患者さんが困惑してケアを嫌がる原因になってしまいます。

ステップ④ 感情の固定

ケアが終わった後、「ケアをやって良かった」という気持ちを残すための声かけをします。「気持ちよかったですね」「私も楽しかったです」など、ポジティブな印象が残る言葉を意識して。よく言ってしまいがちな「お疲れさまでした」は、「疲れることをさせちゃった?」と思わせてしまうので避けましょう。

ステップ⑤ 再会の約束

部屋を去る際には「また来ますね」と、約束をしましょう。カレンダーがあれば、メモを残しておいてもいいですね。ステップ④で固定した「気持ちのいいケア」をまたしてもらえる、優しい人がまた来てくれると思ってもらうことで、次回のケアがスムーズになります。

まとめ

患者さんを思ってのケアだからこそ、患者さんにも喜んでもらい、ケアを通して信頼関係を築いていきたいもの。施設や周囲の理解なども必要になるため、急にすべての技術を実践するのは難しいかもしれません。少しでもこのメソッドを心に留めておいて、気付いた時に意識してみましょう。大きな変化が表れるかもしれませんよ。

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タグ : 介護ノウハウ 認知症ケア技法
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kiralike編集部

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